弁護士の就職と若手弁護士の仕事 blog

弁護士の就職と、若手弁護士の仕事について、まもなく中堅に差し掛かりそうな弁護士が知っていることを記録するブログです。

弁護士の就職⑪ ブティック系事務所に入るには

これまでの記事で私が知っていることは概ね書き終えてしまいましたが(お役に立っていなかったらすいません)、この記事では、ブティック系事務所に入るにはどうすべきかを書きたいと思います。

前の記事に書いた通り、ブティック系事務所とは、企業法務系事務所のうち特定分野に特化している事務所です。所属弁護士全員がその特定分野ばかり扱っているという特殊な事務所で、人数はそれほど多くないことが多く、数人から多くて20人ほどでしょうか。分野は、労働、倒産、知財ファイナンスなどで、独占禁止法会社法・訴訟に特化した事務所もあります。

ブティック系事務所といっても規模には多少の幅があり、毎年又はそれに近い頻度で新人を採用している事務所もあれば、新人を全く採用していない事務所もあります。そのため一概には言えませんが、新人を採用している事務所では、大手、中規模事務所とほぼ同様の採用基準を採用していることが多いと思います。そのため、大手、中規模事務所を目指す対策が、ブティック向けにも通用します。

ブティック系事務所だからといって、初めて社会人になる新人弁護士にその分野の専門知識を求めているということはまずありません(選択科目で勉強していれば、志望度のアピールにはなると思いますが、大きな選考基準にはならないことが多いと思います。選択科目で勉強していたからといって実務に通用するわけではなく、その意味では選択科目が何であっても大差はないので、労働の新人が知財ブティックに採用されるということも全然あると思います。)

他方、新人を全く採用していない事務所には、残念ながら事務所が新人を採用する気がなく、必要があればその分野の経験が豊富な弁護士を中途で採用するということでしょうから、新人では入れません(なお、それでも、ブティック系事務所は規模が小さいことが多いので、前例はあってないようなものと考えれば、ボスにアピールして前例のない採用にこぎつけるということはできるかもしれませんが)。大手や中規模事務所でその分野を経験してから入るという道がスタンダードということになります。

ただ、新人のうちから特定分野に決め打つというのは、やったことのないことを自分の仕事として決めてしまうことを意味し、私としてはお勧めしません。最初は、少なくとも複数分野を取り扱う事務所や、大手、中規模事務所に入り、様々な業務を経験して(経験する機会を得て)、そこであうと思う分野が見つかれば、ブティック系事務所に入るのもよいと思います。

最後に、イメージを持っていただきやすいように、各分野のブティック系事務所として著名な事務所をいくつかご紹介しておきたいと思います。各分野で専門的知見を有するほか、企業法務一般も取り扱い分野としていることもあります。なお、いずれも事務所も、業界の評判としてブティック系として認知されている(と私が認識している)ということで、実際の取り扱い業務はもっと広いかもしれず、以下の記載が不正確なこともあり得ますので、あくまでご参考としてご覧ください(敬称略)。

労働 第一芙蓉、石嵜・山中、安西など

倒産 LM、ひいらぎ、小林信明L.O(現在はNOT)、成和明哲(現在は分裂)など

知財 中村合同特許、阿部井窪片山(倒産でも著名)など

ファイナンス 片岡総合など

独禁法 日比谷総合など

会社法・訴訟 中村角田松本など

 

 今後は、新人弁護士の仕事の話に軸足を移して、時間の取れるときに記事を上げていきたいと思っています。

なお、就職活動について何かご質問などおありの方は、コメントを頂ければご回答させて頂くのでご遠慮なくお知らせください(更新頻度が低いので、お返しに時間はかかってしまうかもしれませんが)。

弁護士の就職⑩ ロースクールではどう過ごすか

企業法務系事務所への就職を目指す場合、ロースクールではどのように行動すべきかも、踏まえておく必要があります。

選考基準は前の記事に書かせて頂いたとおり、学歴、成績、年齢、予備試験合格の有無などですから、ロースクールの修了時にこれらのパラメーターができるだけ高くなるように(より正確には、ただ高くなればいいのではなく、当該ロースクールからの就職実績に照らして、選考基準をクリアできるだろう成績等に到達し、それを超えるように)、勉学に励む、ということになります。

東大のブロック別成績で、基準クリアのために現在も2ブロまでに入るべきなのであれば、1ブロか悪くても2ブロに入るように、必ずしも司法試験の勉強に直結しなくても、ロースクールの成績を上げるための戦略を練る必要があります。授業の取り方も工夫が必要と思います。

ただ、現在は予備試験合格の有無の影響が非常に大きいと思われるので、まずは在学中に予備試験に合格すべく全力を挙げる、これが一番でしょう。予備試験の受験勉強とロースクールの試験が重なる場合、非常に対応が悩ましいですが、以上の現状、選考基準を踏まえて、自分にとって最も合理的な選択肢を取ることが、企業法務系事務所への就職確率を上げることになります。

英語ができると多少有利という時代もあったのですが、今は英語を勉強している暇が合ったら予備試験の勉強をすべきでしょう。

なお、学歴選考基準に満たない可能性が高いロースクールの場合は、いくら良い成績をとっても(主席でも)、面接にさえ呼ばれない可能性を覚悟しなければなりませんから、予備試験に合格するというのが最優先になります(それでも呼ばれないという可能性もあるので、ロースクール選びは慎重にすべきです)。

弁護士の就職⑨ サマクラ、ウィンタークラークなど

サマークラーク(略してサマクラ)、ウィンタークラーク、スプリングクラークなど、ロースクール在学生や予備試験合格者を対象に短期間のクラークを募集している事務所があります。

多くは、法令調査やリサーチなど弁護士の補助業務を行ってもらうと書いてありますが、これはれっきとした各事務所の採用活動です。(受験生や予備試験合格者に少しリサーチしてもらったとしても、実務の案件で具体的に役に立つということは期待できませんので、本当に弁護士の補助業務を手伝ってくれるアルバイト的な募集を行っているわけではありません。)

行くと、多くの事務所では、各リサーチなどは行ってもらい、その結果を報告してもらい一応能力は確認したうえで、食事会や飲み会、勉強会を頻繁に開催し、綺麗なオフィスや弁護士のかっこいい仕事風景を見てもらい、事務所に入りたくなるようにアピールするイベントです。採用活動なので、将来採用の見込みのあるスペックを有している人を選考し(学歴や成績により行います)、来てもらうということになります。

これを行く側から見ると、各クラークの募集に通れば、将来採用の見込みがあることになりますので、企業法務系事務所を目指すならば、各クラークには積極的に募集すべきです。実際、クラークに参加してモチベーションを高めることができますし、実際の仕事を体感することができるので、志望度が高くなくても、アルバイト代稼ぎにいくくらいのつもりでも構わないと思います。そして、各クラークの参加中は、それが選考の一環であることを意識し、いざ就職活動の時に呼んでもらうことを意識して課題には積極的に望み、イベントにも積極的に参加し、弁護士とも積極的にコミュニケーションをとるといいでしょう(変な奴と思われない程度にです。当然ですが。)。

私もサマクラに参加し、実際の就職活動を開始する前に、事務所から面接に来てくださいと連絡がきたことがあります。今も同様の仕組みを取っている事務所が多いと思います。

弁護士の就職⑧ 事務所選びのコツ

就職活動をする際、実際に事務所に入って働いたことがあるわけではないので、どの事務所に入るべきか(就職活動すべきか)迷う方もいらっしゃると思います。

私が考える事務所選びのコツは、次のとおりです。

 

1 取扱業務に興味が持てるか

2 待遇に満足できるか

3 「人」の雰囲気が合うか(面接担当弁護士の下で指導を受けて働く気になるか)

4 将来性(想像)

5 オフィスが気に入るか(広さ、清潔感など)

 

要はその事務所で働く気が起きるか、という問題ですが、

細分化すると以上のようになるかなと思います。

 

1 取扱業務に興味を持つことができるかは、一番重要だと思います。

  正直、仕事はやってみなければ自分に合うかどうかは分かりません。しかし、仕事を始める前からそもそも興味を持てないならば、その事務所は合いませんし、早晩やめることになってしまう可能性が高いと思います。

  好きでなくても構いませんが、やることになったとして、興味を持てるかどうかです。

  私も以前事務所の採用担当をしていて、沢山の修習生、受験生を面接し、入所後の様子も見てきましたが、取扱業務に興味を持てない人からやめていってしまいます。

  取扱業務に興味といっても、入ってやらなければわからないところもあると思います。それでも、たとえば選択科目を選ぶときに、受験向けに選ぶということとは別に、自分が興味を持てる科目はなかったでしょうか。又は、大学やローで興味を持った授業や分野はなかったでしょうか。それらで興味を持った科目や分野を取り扱っている事務所に入る、就職活動の対象にするというのが、お勧めの方法です。

  分野は、大きく分けて、企業からの依頼をこなす企業法務と、個人の方からの依頼をこなす個人法務(一般民事という言葉が多くの場合指すのは個人法務かもしれません。)の二つです。ここは本当に好みです。

  社会的不正義を正したい、権利救済に尽力したいという気持ちが強い場合は、どちらかといえば、個人法務の方が合うでしょう。企業法務ではそのような側面は正直言って希薄で、ビジネスや経済活動を支え、企業間の紛争を解決し企業の力になるという仕事が多く、対消費者の側面では、たとえば消費者被害が出たケースでは、企業側の立場に立ち、合理的範囲でできるだけ消費者への賠償額を少なくし、企業活動への影響を最小限にするというのも仕事の一つになります。これが社会的正義に叶うのかといわれると何ともいえないといいますか、むしろ不正義ではないかという批判もあり得るところで、しばしば左系の先生方が企業法務系の事務所を批判するのは、このような視点からということもあります。

  他方、企業法務ならではのスケール感、高級感(登録当初の給与・報酬も企業法務の方が多くの場合高いです。)、理論的高度さ(個人法務でももちろん高度な法律問題は山ほどありますが)もあります。

  個人法務は、たとえば、離婚問題や交通事故、労働問題で労働者の力になる、多重債務者の方の債務整理をお手伝いする、などです。私は個人法務の取り扱い経験が乏しいので、このブログで記述が浅く申し訳ありませんが、非常に魅力的な業務の一つだと思います。日本の弁護士の多くは、個人法務を中心に扱う弁護士です。それだけやりがいがあり、ニーズもあるということです。

  個人法務に興味があるが、大手事務所から勧誘を受けたのでひとまず大手事務所に入るというのは、選択肢として完全に間違いとは言いませんが、お勧めしません。大手事務所で個人法務を扱う機会はほとんどゼロと予想され、興味がある仕事にかかわる機会が得られず、ほどなく関心を持てなくなり事務所を辞めることになってしまう可能性があるからです。しかし、個人法務を経験してから企業法務事務所に行くのは一般に難しい一方、企業法務事務所から個人法務中心の事務所に行くことは比較的容易かもしれませんので、全く個人法務を扱わない可能性が高い大手事務所ではなく、中規模又は小規模の事務所に入り、企業法務を中心としつつ個人法務も扱える環境で仕事をしてみるというのは選択肢の一つではあります。

  以上の次第で、個人法務に興味があるならば、大手ではなくて、顧客の紹介等で個人法務も扱う中規模事務所に入る方がお勧めです(入ることができるかどうかはさておいて)。大手事務所や外資、ブティック系の事務所は個人法務を扱う機会はほぼゼロでしょうが(私の所属事務所も、個人法務はほぼゼロで、仮に依頼したいという話があっても他の個人法務を扱う先生にご紹介しています。選択と集中ですね。)、中規模事務所では多くの場合、個人法務を取り扱う機会もそれなりに得られると思います。

 

2 待遇も重要です。

  正直、1年目の給与・待遇などさして重要ではなく、問題は何十年も務めることになるであろうパートナー、経営者になってからどれくらいの仕事(収入)が得られるかなのですが、特に初めて社会人となる新人弁護士の頃は、初任給がいくらかを他の新人弁護士と比べ一喜一憂するものなんですよね(私もそうでした)。

  そして、待遇に不満があればモチベーションが上がらず、もたなくなりますので、待遇は、客観的にはそのような短期の差はたいして重要ではないが、主観的には極めて重要なことが多く、主観的に重要ならば事務所選びでは重視することにも合理性があるだろう、ということになると思います。自分の就職活動ですから、遠慮する必要はないと思います。

 

3 人との相性は当然のことですね。尊敬できる先生が見つかれば、その下で働く気にもなると思います。逆に、面接してくれた弁護士がネチネチした性格で合わなそうであるとか、レベルが低く感じたとか(修習生目線でこのように感じるのは多くの場合勘違いかもしれませんが)、そのような場合はその事務所はやめておくのが無難です。入ってからよりその違和感は強くなります。

 

4 将来性は、事務所に入る前までは分からず想像するしかありませんが、たとえば、以下①から③の事務所に入るときはよく考えたうえで入ることをお勧めします。業界で評価を得ている著名事務所(企業法務系でいえば、四大はもちろん、準大手、中規模事務所や外資、ブティック系も多くがこのカテゴリーですし、小規模でも多くあります)に入っておくと、その後の転職や弁護士人生に良い影響を生みます。逆もまたしかりで、どこまで行っても「あの弁護士はあの事務所の出身だ」という評判がついて回りますので、最初の事務所選びは極めて重要です。

①ボスがかなり上の期で、残りは大きく離れた新人弁護士ばかり

→一定年数以上在籍すると追い出される可能性があります。5年から10年以上やると弁護士も一応(あくまで一応です)一人前になり、自分のクライアントもつきはじめ、事務所経営に口を出したくなったり、ボスに言われずとも自分のやり方でやりたくなったりボスのクライアントが持っていかれてしまう可能性も出てくるので、一定年数以上いると「そろそろ独立したらどうだ」という話をされるという事務所が一定数あります。独立や移籍をすればいいことではあるのですが、安定して長年働くということはできないし、ボスのクライアントを共同で担当したりもらうということは考えにくい環境なので、そこは覚悟して入る必要があります。

弁護士法人自体でクライアントを取っている事務所(特に新興系)

いわゆる新興系の弁護士法人を作っている事務所などでは、事務所自体で集客し、それを中のアソシエイトが分担して担当するという環境であることが多いです。この場合、出資し自分自身のクライアントから得る収入で生きているといういわゆるパートナーは想定しにくく、永遠にアソシエイトすなわち事務所から給与をもらって生活するということになる場合があります。それはそれで一つの生き方で、何も悪いことはありませんが、自営業というより会社員に近く、収入も頭打ちになりやすくなります(事務所から給与をもらって働けているということは、事務所はそれ以上の収入を得てアソシエイトに給与を払っても収入を確保しているということですから、クライアントから得られる報酬に限界がある以上、自分が中抜きなしでクライアントから直接報酬を得るより必然的に少ないし収入になります)。

仕事を取る心配をしなくてよい立場で長年いられるというのは、これまでにはなかったビジネスモデルで、10年以上の経験がある弁護士や元裁判官、元検察官で自分のクライアントが十分にはいない方の所属も増えているようです。

③ボスの期が浅い(登録5年未満など)

弁護士業は職人的な側面があり、代々受け継がれる技術や暗黙知をどれだけ若いうちに学べるかで、その後の弁護士としての力(それは当然、集客にも影響します)に影響します。期が浅いということは、ボスもまだ修行中ということです。ボスの出身事務所が上記のような著名事務所であるかどうかはよく確認しておくべきと思いますが、期が若いと、修行中のボスから教わることになりますので、押して知るべしです。経験年数が多ければ多いほどいいということではもちろんありませんが、期が浅い、特に3年未満とか5年未満のボスの事務所は、将来の自分のために、できるだけ避ける方がよいと思います。弁護士は、最近では5年から10年前後で一応一人前として独立したりパートナーになったりしますので、できれば10年以上は経験があるボスの事務所に入るのがよいと思います。もちろん、あくまで可能性の問題で例外もないわけではないでしょうから、参考としてご覧ください。

特に企業法務分野では、分野が専門化しやすく、一定年数の業務経験がないと仕事を一人で回せるようにはなりにくい気がします。一般民事系事務所からの独立は3年前後からよく見かける一方(それより短かったりソクドクもあり、それはそれで何とかやっていけるようです)、企業法務系事務所からの独立は3年前後ではほとんど見かけません(5年以内なら移籍がほとんどだと思いますし、独立しても取り扱いは一般民事が中心になったりします)。顧客が取れないということも一因だと思いますが、企業法務系は経験年数が必要になりやすい分野だと思いますので、この観点からもやはり、ボスの期が浅い事務所に入るかどうかはよく考えてからがよいと思います。

弁護士の就職⑦ ロースクールから四大、準大手事務所を目指すには

前の記事で、四大や準大手事務所を目指すには、

・学歴

・成績

・年齢

・予備試験合格の有無

などが選考基準になることを書きましたが、

仮に、四大や準大手事務所への採用実績がない又は少ないロースクールに入った場合は、成績がどれだけ良くても、過去の例に従えば、四大や準大手事務所に入ることはできない、又は極めて難しいということになってしまいます。

予備試験が始まる前は、そうなるとどうしようもないという状況もあり得ましたが、今は予備試験があります。

予備試験に、特に良い順位で合格できれば、学歴や学校の成績は水準に満たなくても、目標の事務所に入ることができる可能性があります。

したがって、早く法曹を目指すためにも、目標の事務所に入るためにも、ロースクールに入るかどうかにかかわらず、今は予備試験の合格を本気で目指すのが第一とも言えると思います。

 

法曹業界も、就職活動では相当な学歴社会なので、採用実績がない又は少ないロースクールや大学から四大、準大手を目指すのは、不可能と考えておくべきです。残酷な現実を受け止め、予備試験の合格を目指す、これがベストの選択肢になると思います。

 

ちなみに、日本国内では最高峰の学歴とされる東大ロースクールに入った場合、東大ローでは成績順にブロック分けされ、1ブロックから4ブロックまでに分かれているようです。私が知っているのはかなり前のことですが、このうち1ブロック、2ブロックであれば四大の面接にも基本的に呼ばれる(すなわち内定の可能性も相当にある)一方で、3ブロック以下だと厳しくなるという状況でした。昔の情報ですが、東大ローでさえも上位に入らなければ四大(場合によっては準大手にも)に入ることはできないという現実があります。現在もこの状況が続いているならば(おそらく近い状況は続いていると思います)、東大ローに入った場合も、予備試験に合格することが、企業法務系事務所を目指すうえでは最大の近道になります。

 

 

 

弁護士の就職⑥ ロースクールは高学歴といわれるところに(企業法務系事務所への就職を目指す場合)

これまでご紹介した通り、特に中規模以上の企業法務系事務所への就職を目指す場合、学歴は相当に高いものが要求されます。

場合によっては、入るだけでほぼ自動的に足切りとなってしまう大学院も、現実としてはあり得ます。そのため、企業法務系事務所を目指したい学生の方は、授業料が安いとか、家から近いなどということよりも、しっかりと入試の対策をして、高学歴といわれる大学院に入るべきであることは、統計上明らかだと思います。

具体的には、東大、京大、阪大、一橋、慶應、早稲田(旧帝大、中央)のどれかには入っておくべきです。このような情報を知らずに、事実上希望する就職先に入るチャンスを絶たれてしまうことが仮にあるとすれば、あまりに不条理で不幸なことだと思います。

たとえば四大を見ると、ほとんどの弁護士の出身大学(大学院)が上記のものになっていると思います。

中規模事務所でも、傾向はほとんど同じです。上記以外の出身大学(大学院)の弁護士は極めて少ないの現状だと思います。

小規模事務所では、毎年新人を採用するわけではないので、もう少し幅が出るかもしれないのですが、一般民事の事務所と比べると、出身大学(大学院)が偏る傾向にある気がします。外資系やブティック系事務所の状況は、中規模事務所とほぼ同様です。

 

一般の就職活動でも同じかもしれませんが、学歴についての現実はとても厳しいので、これから法曹を目指される学生の方は参考にして頂けますと幸いです。

(なお、当然ながら、特定の大学をよいとか悪いとかいうつもりは毛頭なく、統計上明らかな結果を書かせて頂きました。)

予備試験に合格した場合であっても、大学や大学院の学歴が重要な選考基準となることは変わりません。

弁護士の就職⑤ 中規模事務所に入る方法

弁護士の所属人数が数十人程度の、いわゆる中規模事務所に入る方法(就職活動)について書いていきます。おそらくこのくくりに入ることで異論が少ないと思われるのは、東京でいえば、敬称略で、岩田合同、田辺総合、牛島総合、東京丸の内、桃尾・松尾・難波、阿部・井窪・片山、あさひなどかなと思います(他にも複数事務所が該当しえます。完全に主観で、ここに入る又は入らないことに特段意味付けはしておりませんので、一個人の雑感としてご参照ください)。

 

前提として、中規模事務所は、少なくともこれまでの傾向では、司法試験の合格発表があってから採用が本格化するところが多いです。大手、準大手は合格発表前に、大学院の成績に基づき(司法試験の成績は問わずに)採用を決めてしまうこととは対照的です(ただし、中規模事務所でも、サマクラ等の結果を下に発表前に採用を決めてしまうところもあり、事務所によります)。

 

なぜ発表後の採用となるかといいますと、中規模事務所でも、理屈上は発表前に採用を決めてしまうことも可能ではありますが、大手、準大手とは異なり年1人から数人採用するか否かであり、入ってもらった弁護士はできる限り全員がパートナーとなり長く務めてもらいたいという希望を持っている(そのようなキャリアプランが想定されている)ことが多いので、採用する弁護士の当たりはずれはできる限り少なくしたい、また不合格では困るから合格が確定してから採用したい、ということではないかと思います。

小規模事務所では数年に1人取るかどうかですから、この傾向はより顕著です(ただし、また別の記事にするかもしれませんが、小規模事務所では、ボス一頭体制で新人弁護士は数年ごとに使い捨てという事務所もそれなりにあります)。本番である司法試験の成績も踏まえて、綿密に面接を重ねて、採用するということです。

 

中規模の、特に著名な企業法務系事務所の選考基準の傾向は、次のとおりです。

・学歴

・成績(司法試験、大学院いずれも見るが、司法試験の比重が大きいことが多い)

・年齢

・予備試験合格か否か

・以上の客観的な数値等を前提として、志望度、事務所に合うかどうか

その他、職歴や外国語能力

 

学歴が重視されることは大手、準大手と同じです。大学院、大学いずれも見られます。大手、準大手にも共通しますが、東京の事務所であれば、国立であれば東大、京大、阪大、一橋が中心です。私立であれば、慶應と早稲田が中心、普通に選考基準に入ってくるのは中央まででしょうか。それ以外の大学でもダメということはもちろんないと思いますが、予備試験合格や、成績で飛びぬけていることが必要となってくるかもしれません(全然間違っているかもしれず、完全に私が受けている印象であって正しいとは限りませんのでご留意ください)。

 

成績は、司法試験の成績はそれなりのものが求められる傾向にあります。企業法務系で著名な事務所では、もちろん事務所により違いがあり得ますが、できれば100番以内、悪くても500番以内、最低でも上位50%以内に入っていないと、最終的な採用に至る例は少ないかもしれません。

なお、司法試験の成績は、若手の頃の事務所移籍の際にもかなり重視されるので、良いに越したことはないです。ちなみに、受験回数については、もちろん1回目合格がよく、2回目でもダメということはないことが多い一方、3回目以降の受験で合格した場合は厳しい見方をされることが多いかもしれません。個人的には、3回目の受験であろうと成績や経歴次第ではないかと思いますが、現に企業法務系事務所で3回目以降の入所者はほとんど見かけない気がします。

年齢は大手、準大手と同様、20代中盤までがほとんどでしょう。

予備試験合格者がかなり優遇されることも同様です。これからは、中規模事務所以上については、予備試験合格がスタンダードになってくる可能性もあると思います。予備試験合格は昨今かなり重視されており、学歴や大学院の成績が多少届かなくても、予備試験合格があれば逆転して採用に至る可能性は十分あります。

職歴や外国語能力は、補充的な要素にとどまることがほとんどと思います。職歴は、若さという点ではマイナスですから、むしろなくて若いうちに合格する方がよいかもしれません(公認会計士など難関他資格を持っておられる方は、多少年齢が上でも入所に至っている例もたまに見かけます。しかし、たまにです。)。渉外系であれば外国語能力が重視される可能性はありますが、名前が通った中規模事務所以上になると、学歴や成績が基準に届かないのに外国語能力だけで採用に至ることはまずないと思います。

 

採用は年1人からせいぜい数人で、特定の事務所に入ろうと思うと、大量に採用する大手、準大手より狭き門です。著名な事務所では、100人以上が応募し、採用は一人(倍率100倍以上)ということも珍しくありません。

面接を重ねて人柄が事務所に合うかどうか等も確認され、絞りに絞って最後の一人を決めるというイメージです(外資やブティック系も同様です)。

 

そのため、相性の問題もあり、学歴や成績がどれだけ良くても希望の事務所に入れるとは限りませんので、特定の事務所に絞りすぎず、似た規模の事務所をたくさん受ける中で相性が合うところが見つかればラッキー、というくらいの気持ちで行くとよいと思います。