弁護士の就職と若手弁護士の仕事 blog

弁護士の就職と、若手弁護士の仕事について、まもなく中堅に差し掛かりそうな弁護士が知っていることを記録するブログです。

司法修習に行くかどうか

先日、合格後に企業法務部への就職を志望していて、司法修習に行くかどうか迷われている方がいました。

 

司法修習に行かずとも企業内の実務経験を積めば弁護士登録ができる仕組みになっていますので、司法修習に行き一年を使うよりすぐに仕事を始めるべきではないか、という考えもあるようです。

 

私はインハウスの経験はないので確かなことは言えないのですが、仕事柄インハウスの先生方と接する機会も多く、その経験からすると、余程の事情がない限り、司法修習は行くのが良いと思います。

 

法務部が充実している企業では、弁護士は少数派であることも多く、法務部の世界には無資格ではあるが法務の経験を長く積んできた方が沢山います。企業内での契約書の作成、審査などの業務は、そのような無資格の方の方が経験値が高く、弁護士資格があるだけでは何の意味も持たないことも多いようです。

弁護士資格を持つ意味の一つは、裁判が分かっているということにある気がします。司法修習では、裁判所側、弁護士側、そして検察官側とそれぞれの立場から、実務家のすぐそばで実務を学ぶことができるので、司法修習を経ているかどうかで、裁判への理解、経験は全く違うレベルになります。

こう言っては身もふたもないのですが、初めから企業の法務部に入るならば、必ずしも労力と時間をかけて司法試験に挑戦する必要はありません。司法試験に挑戦し合格したからには、他の法務部員に差をつけるためにも、司法修習は是非行かれると良いと思います。

企業によっては弁護士資格の有無は全く考慮されず優遇もされないということもあるようですが、日常の契約書作成や審査、社内の法律問題検討においても、最後裁判になるとどうなるのかを見通せるかどうかは、大きな差を生むはずです。

 

司法修習で学んだことは、法曹として第一歩を歩む確かな基礎になります。給費制が廃止され貸与制になった時代もあり、期間も昔よりは短くなりましたが、その間も司法修習制度が絶え間なく続いていることは、それなりの理由と意味があると思います。

 

 

 

合格発表と初動

先日試験の合格発表がありましたが、発表前後から沢山の方がこのブログを訪れてくださっているようです。

もう10年以上前ですが、法務省に発表を見に行き、その夜友人達と飲み明かしたことを思い出しました。

今年は合格者が1400人ほどで、法曹界に来られる方が年々少なくなるのは寂しい限りですが、私は合格発表後に先輩のブログを読んで沢山の情報を得て今があり、このブログもほんの少しでもこれから法曹となられる方のお役に立てたらとても嬉しいです。

 

今、少なくとも大都市圏の企業法務系事務所では、全体として明らかに人手不足に陥っています。企業法務系事務所を希望される方は、是非積極的にアプライしてみて下さい。

 

公募している事務所に応募するほかに、まずは身近な先輩法曹に話を聞き、就職の相談にのってもらうのがお勧めです。就職先を紹介してくれと言われると、受ける側も気がのりにくいのですが、合格したので法曹の話を聞かせて下さい!などと言えば、断る法曹は少ないと思います。みなそうやって先輩法曹から話を聞いて今がありますので。

事務所側の心理としても、いざ公募を出すと採用活動が大変なので踏み切れていないが、もしいい人がいたら是非入ってほしいという事務所は、企業法務系の小規模から中堅の事務所で沢山あると思います。そのような採用のツテを、先輩法曹が持っていることもあります。私も、ロースクールでお世話になった先輩に話を伺う中でご縁をいただくこともありました。

 

 

募集していない事務所へのアプライ

修習のとき、同期の友人が、とあるベテランの先生に感銘を受け、募集していない事務所だったのですが、熱烈な手紙を送ってアピールし、新人弁護士として採用されたことがありました。

 

珍しい例だとは思うのですが、特定の先生や事務所に惚れ込んだり、特定分野をどうしても専門にしたいなどという強い志望がある場合は、案外このような方法は可能性があるかもしれません。

 

もちろん普通に就職活動をするよりは可能性は低いので、全くお勧めするわけではないのですが、ダメ元でやってみると案外引き合いがあることもあるかもしれません。反応がなくて当然ではありますが、ダメで元々という前提で。

 

私の事務所でも、何年に一回か新人弁護士を募集して入って頂いているのですが、今年は採用しようかしまいかと議論している間に時間が経っていて募集をかけずじまいで一年経過ということも実はよくあります。そのようなときに、もちろん履歴上ある程度有望そうな方に限られることにはなると思いますが、丁寧に、募集していないだろうか、採用をご検討頂けないかと熱意ある手紙を送ると、もしかすると反応があるところがあるかもしれません。

表向き募集していない事務所だからこそ、他のライバルはほとんどいないはずです。

 

なお、一般論として、弁護士は言葉の扱いのプロという側面があるので、お手紙や履歴書の誤字脱字にはとても厳しく、また形式面も非常に細かく見たりする傾向にあります。字は下手でも問題はありませんが、丁寧に記載しないと目についてしまったりします。

私が以前所属した事務所では、履歴書や志望理由書に誤字脱字があるとそれだけで不合格になっていました。このような事務所も珍しくないと思うので、応募側からするといちいち手間がかかってしまいますが、一つ一つの球(応募)を大事に丁寧にすることが、内定への近道かなと思います。

論理的でない志望理由を見かけると悪くとる採用側の弁護士もいると思うので、他の方に一度でも見てもらい話の筋は通っているかの確認もされると良いかもしれません。

 

1日のスケジュール例

弁護士のスケジュール例は、弁護士や事務所ごとに千差万別ですが、以下のリンク先で、スケジュール例のご紹介がされております。人それぞれ、日にもよるのですが、ご参考になりましたら幸いです。なお、企業法務系事務所と一般民事系事務所では、裁判の有無などスケジュールに違いが出るかもしれません。企業法務系の中堅以上の事務所では、採用ページで1日のスケジュール例が書かれていることもあり、他事務所のことながらとても参考になります。

 

https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0016/ichinichi/

https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0016/ichinichi/

https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0016/ichinichi/

https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0016/ichinichi/

 

 

ブログご紹介

記事を書くに当たり、他の先生方はどんなことを書かれているのかと検索することがあるのですが、以下の先生方のブログは、このブログをご覧頂いている方にも参考にして頂けるのではないかと思いましたので、勝手ながらご紹介させて頂きます。私のブログより遥かに役に立ち、勉強になります。留学のことにも触れられていたりします。

 

https://drifterslaw.com

https://note.com/koshikake

https://law-trivia.hateblo.jp

http://gatsulaw.blog.jp/?ref=head_btn_home&id=7687520

 

✳︎リンク先の先生方が本記事をご覧になり、万一本記事によるご紹介に不都合等ございましたら直ちに削除させて頂きますので、大変お手数ではございますがご一報賜れますと幸いです。なお、本記事は収益化しておらずその予定も全くない匿名ブログで、上記ご紹介も純粋に私自身が拝見して大変勉強になったものをこのブログをご覧になった皆様にご紹介することだけを目的にしております🙇‍♂️

弁護士業の忙しさ

早速記事のリクエストを頂きました。

弁護士業の忙しさについて書いてみようと思います。

 

まず、仕事の忙しさは、事務所ごと、弁護士ごとに全く違うと思います。

企業法務系の事務所ですと、総じて、10年目くらいまでは下働きで時間がかかる作業も多くて忙しく、それ以降はアソシエイトにお願いできる仕事が増えたり体力的な問題もあり徐々に緩和されていき、シニアパートナーになるとほとんど後輩弁護士に任せて事務所に来ない日も多くなる、というイメージでしょうか。

 

大手では、俗に9時5時と言われますが、若手のうちは朝9時から朝の5時まで働き、帰って仮眠してまた朝9時に来て仕事開始、という苛烈な業務環境である弁護士もいるようです。ただ、土日も含めて毎日ということではないし、大手でも部門や時期によっては終電前には帰れるという方もいますので、大手に入ったら全員がこうなってしまうということではありません。最近は働き方改革などと言われ、弁護士といえど多少は緩和される傾向にある気もします。

私の同期の友人は、若い頃、平日は大体朝10時前後に出社して、帰りは夜中2時か3時、土日片方は普通に出勤、もう片方は週によるが概ね休める、という感じだったようです。これでもかなり苛烈ですが、留学や出向に出る前までは、事務所内で評価されるにはこれくらい必要なのかもしれません。大手はタイムチャージで仕事をするのが基本で、アソシエイトの仕事はビラブルを稼ぐことですから、事務所経営上やむを得ない面もあります。

 

なお、弁護士で唯一?良いと言ってよいところは、多くの事務所で雇用契約ではなく業務委託契約で、仕事に疲れたら少し休憩にコンビニに行くなどということができるはずです。なので、一度出勤したら公務員のように机にかじりつき移動できないということではなく、精神的、肉体的負荷の点で唯一の救いかなと思います。

 

大手以外は、本当に事務所によりけりだと思いますが、おおよその傾向としては、大手より多少は苛烈さが緩和されることが多いかもしれません。

 

私の事務所では、アソシエイトは、大型案件が来た直後などは別として、終電までには帰っています。平常運転の日は、朝9時台に来て、夜8時から11時の間くらいに帰っているでしょうか。土日は事務所に出る日も有れば、家でpc作業すれば十分という日もあり、上手く前後で調整すれば土日全く仕事をしないで済むこともあると思います(アソシエイトの事務所滞在時間を測っているわけではないので想像ですが・・)。ブティックとはいえ、小規模事務所では、概ねこれくらいの業務時間であることが多いのではないかと勝手ながら想像しています。中堅事務所では、もう少し忙しいことが多いかもしれません。ブティックではない小規模の企業法務中心の事務所では、もっと業務時間が少ないところも沢山あると思います。

ただ、以前一緒に仕事をしたブティック系の小規模事務所は、連日朝3時や4時にメールが返ってきており、事務所のカラーによって千差万別という気がします(なお、その代わりなのかどうか分かりませんが、アソシエイトの待遇は大手、準大手並のようでした)。

 

案件分野が絞られていく過程

久しぶりの更新になってしまいました。

 

この間にも毎日のべ数十人の方がこのブログを見てくださっているようです。昔、私が先輩法曹のブログを読んで今があるように、少しでもお役に立つ記事があれば嬉しいです。

なお、もしご希望のテーマなどありましたら、コメントに書いて頂けましたら私が書けるテーマであれば記事を書かせて頂きますので、ご遠慮なくお寄せ下さい。個人的な進路で迷われていることなどでも歓迎です。

 

さて、今日は、個々の弁護士が扱う分野が自然と絞られていくというお話です。

大手、中堅、ブティックなどの企業法務系の事務所で仕事をしていくには、分野を絞っていくことになると思います。

クライアントが、数ある企業法務系の事務所と弁護士の中で、最も詳しいところに頼みたいと常に思っており、事務所、弁護士側としても特定分野の案件を経験することでその分野の経験が積み上がり、経験が新たな同分野の新規クライアントに繋がり、自然と差別化され分野が絞られていくからです。

 

特に大手やブティックは、ほぼ100%、各弁護士が特定分野に特化していきます。

逆に言えば特定分野、特定と言っても本当に一つである場合から2.3分野ということもありますが、それ以外の分野を扱うことはなくなっていきます。

 

これはメリットでもあり、幅広い分野に関わり続けたい場合にはデメリットでもあり、中堅事務所や小規模の幅広い案件を扱う事務所にも人気が集まる理由でもあります。

 

私の場合、事務所が小規模のいわゆるブティック系で、特定の二分野に案件がほぼ絞られていて、それ以外の分野は基本的に扱いません。

ただ、大手に比べれば大量のアソシエイトを抱えているわけではないため、個々の経費負担が大幅に少なく、パートナーの取扱分野に関する自由度の幅は広いので、趣味的に他分野を取り扱うということも問題なく可能です。私の場合、年に1.2件ですが、刑事事件を受ける機会があります。専門外ではあるのですが、以前、時間をかけて取り組んだ裁判員裁判で無罪判決を取得したこともあり、いつもの取扱分野とは違う醍醐味もあるなと思っています。

もちろん、専門外ですし、売上ということでも労力に比して身入りは少なく、その意味で趣味的と言わざるを得ないのですが(趣味で力を抜いているということではなく、事務所経営の観点からは非効率なので本来業務とは言えない、という意味です)、大手では高額な経費負担を上回る売り上げを上げるプレッシャーが強く、シニアパートナーになるまでは趣味的な分野に時間を使う余裕はないのが普通なので、この辺りは規模によって違いがでるかもしれず、中堅、小規模事務所の良いところといえるかもしれません。