弁護士の就職と若手弁護士の仕事 blog

弁護士の就職と、若手弁護士の仕事について、まもなく中堅に差し掛かりそうな弁護士が知っていることを記録するブログです。

若手弁護士のキャリア

久しぶりの更新になってしまいましたが、今回は若手弁護士のキャリアについて書いていきたいと思います。

なお、はてなブログの機能で記事閲覧数の合計が出るのですが、すでに2000件を超えたようです。これから法曹を志される方や、修習生の方に、多少でも参考になる記事があればと思っております。

 

企業法務系弁護士のキャリアは、昨今はたくさんの事務所があり、また弁護士業以外の分野で活躍されている弁護士もたくさんいらっしゃるのですが、典型的には以下のようになっています。

 

企業法務系事務所入所(ジュニアアソシエイト)、下積み

→5年前後でシニアアソシエイトになり、案件の実働部隊として活躍し始める

→その後留学、出向、事務所移籍などを経て数年業務をこなし、事務所によるが概ね登録10年程度経過した弁護士からパートナー審査。

 通過した弁護士はパートナー就任(ただしいわゆるジュニアパートナーで、いわゆるエクイティパートナー・執行パートナーと比べ経費負担その他の待遇に傾斜があることが多い)

→パートナーとして勤務(数十年)

 

弁護士が必ず当たる壁が、パートナー就任とその後の弁護士生活の基盤となる顧客の確保です。弁護士は自営業ですので、一部の例外的な事務所を除いて、いつかは自分で顧客をつかまなければなりません。企業法務系事務所では、10年から15年程度はシニアアソシエイト、カウンセルなどの立場で事務所から給与をもらって働くことはできますが、それを超えると、より元気な下の期の弁護士が沢山入ってきますので、顧客をつかみパートナー審査を通過してパートナーになるか、事務所を移籍して他の事務所に行くか、という選択を迫られることになります。他の事務所に行っても、一部の例外的な事務所を除いて、結局自分で経費を負担できるだけの顧客をつかまなければなりません。

 

顧客のつかみ方は、最近は多様化していると思いますが、企業法務系事務所で最も典型的と思われるのが、事務所内のパートナーから仕事をもらうことです。パートナーが最大の顧客とよく言われますが、上場企業またはそれに準じる規模の企業からの依頼となると、そう簡単に年次が浅い弁護士に依頼してくれるということは特殊な経歴等でもない限りないので、期が上の先輩パートナーがそうした良い顧客を確保していて、いわば寡占状態にある業界が多いと思います。その案件の実働部隊として声をかけてもらうというパターンです。

もちろん、パートナーとなれば外部へ営業に出たり紹介をしてもらって顧客を自ら獲得していくことが必要ですが、パートナーとなる前後は、事務所内の他のパートナーからの仕事で収入の多くを得るということも多いと思います。

しかし、事務所内の上の期のパートナーも、沢山の下の期の弁護士が事務所内にいる中で、頼みたいのは仕事ができてよく働いてくれる弁護士でしょうから、アソシエイトのうちから、事務所内での他の弁護士からの評価を高める必要があります。(逆に、事務所内の仕事をサボると、自分で大口の顧客をつかまないとパートナーになれず事務所移籍を余儀なくされるということになってしまいます。)

 

つまり、結論としては、パートナーに順調になり活躍したければ新人時代から馬車馬のように働け、ということになってしまうのですが、これが案外難しいです。

3年目から完全歩合になるような4大事務所の一部のような場合を除いて、働けば働くほど給料がそれに比例して増えるとは限らないので、短期的にはある程度すべきことはしてそれ以上はしない(文句を言われない程度に働く)というのが給与との関係(時給換算というべきでしょうか)では最適、ということはよくあることです。しかし長期的には事務所内の上の期のパートナー、特に自分の業務分野の先輩パートナーの評価はパートナー審査にもその後の長期的な収入にも大きく影響しますので、信頼の積み重ねは大切になってきます。目先の給料に左右されずに働けと言われてもモチベーションが上がらないのは仕方ないし、私も実際そうでしたが、入所後10年くらいは騙されたと思ってがむしゃらに働き続けるのが重要と、今になって感じています。

 

なお、上記で一部の例外的な事務所があると書きましたが、これは例えば、損保系や貸金業系、債権回収系の顧客から大量の事件処理依頼を受けて対応する事務所や、最近の新興系事務所です。

このような業務を純粋な企業法務というべきかどうかはさておいて、損保系や貸金業系の大口顧客を抱えている事務所は、事務所(多くの場合代表パートナー)に対して毎月沢山の案件(損保系であれば交通事故の損害賠償の被告側の交渉事件や訴訟事件、貸金業系であれば貸金の請求や過払い金の被請求側の交渉事件や訴訟事件、など)が依頼されるので、事務所(代表パートナー)は常に多くの実務処理担当の弁護士を欲していて、この場合、必ずしも若手弁護士に限らず、10年から場合によっては20年以上経験を経ている弁護士にもその担当(下請け)をしてもらうために事務所にいてもらう、つまり給料を払い続けるという場合があります。これも双方のニーズに成り立っていますので、一つのモデルかなと思います。新興系というのは、昨今一般民事案件を中心に広告を中心に顧客を獲得して急成長している事務所です。このような事務所も構造は同じで、事務所が広告で大量に案件を取ってくるので、その実務処理担当の弁護士が沢山必要で、本来パートナーになっているはずの年次の弁護士に給料を支払いい続けてもらうというケースが出てきているようです。

顧客を自ら獲得し、経費を支払って事務所の運営に参画する(パートナーの定義とでもいうべきものですが)ことは、言うは易く行うは難しなので、このような例外的な事務所も、弁護士業界において相応のニーズがあると思いますし、新しいモデルを提示してくれたのかなという気もします。

 

なお、上記モデルケースに沿ってパートナーになることが唯一の政界ではないことはもちろんです。人によって仕事にどの程度の熱量を持つかは異なりますし、異なって当然で、何がよくて何がよくないということはありませんので、仕事一筋で、入った事務所でパートナーになり活躍したいという場合の検討ということでご覧頂ければと思います。